Q30602
「歯垢・歯石予防、犬猫の歯みがき、どうしたらいいの?」
(パート1 理論編)
一年前に歯石を取りました。今年も口臭と歯石が気になってきたので、動物病院に行ったところ、「かなり速いペースで歯石がつくので、歯みがきをしなさい!」と言われました。それで歯ブラシを買って、犬の口に入れてゴシゴシしょうとしたら、犬が暴れだしたのです。
いつもはいい子なのですが、「歯みがき」になると悪い子になります。
かた先生!どうしたら「歯みがき」を上手にさせる子になるのでしょうか。教えてください。
大分市ナポリ(イタグレ5歳メス)の家のものさん
パート1 理論編
この「歯みがき指導」は、実際のところ大変長い説明になります。それで、理論編と実技編の二回に分けて解説いたします。今回は「パート1 理論編」です。
ハーイ御指名ありがとうございます。「良い行い」「良い習慣」と言うものは、人でも犬でも見ていて微笑ましいものです。「犬に歯みがき!」、あなたは大変良いことに気付きましたね。フードやワクチン、そして、犬の生活における環境が良くなっていることで、犬猫たちも長生きするようになり、私たち獣医師も最近では、治療行為以外に「しつけ」を含む予防衛生指導をすることが多くなってきています。
あなたは、「歯石が気になって」と表現していることで、日頃のナポリちゃんとの接触度合いが測れます。さて、あなたへの回答は、次の7の順で説明します。尚、「パート2 実技編」は次回に出しておきますので、見て於いてください。
- 歯石はどうしてできるの? 「歯垢」 と 「歯石」
- 歯垢、歯石と歯周病の関係は? 「歯肉炎」 と 「歯周炎」
- 上顎・第四・前臼歯・歯根尖部・膿瘍(じょうがく・だいよん・ぜんきゅうし・しこんせんぶ・のうよう)
- 奥さん、ほおって置くと、大変なことになりますよ。
- 歯垢・歯石の予防方法は?
- 今、歯石が既にリッパにある子は、どうしたらいいの?
- 「歯みがき上手な犬」にする方法!
かなりの量の説明になります。 最後までシッカリと(パート2まで)読んで「犬猫の歯みがき」をマスターしてください。
1.歯石はどうしてできるの? 「歯垢」と「歯石」
まず、犬が食べ物を食べると、歯に当然のこととして、食べ物のカスがつきます。それを、口腔内の細菌がそのカスを分解していく時、歯の周りにヌメリとして付着するもの、それが歯垢です。つまり、「食べ物のカスと、細菌のカタマリ」と言えるものです。その歯垢に、唾液の中のカルシュームが沈着してきて、海のサンゴ礁の様に「硬い歯石」として歯に付着します。
海のサンゴは、きれいな海の中で大きく育つものです。口の中の歯石は、キタナイ歯に付着して大きく育つものです。(コラ!そんなものと比較するな!)
2.歯垢・歯石と歯周病の関係は? 「歯肉炎」と「歯周炎」
サンゴ礁は、お魚さんの「すみか」です。歯石はバイキンマンの「すみか」です。また、歯垢はバイキンマンの養殖場です。
また歯垢は化学的に、歯石は物理的に口腔な内粘膜の免疫バリアーを破り、歯肉に炎症反応を引き起こし「歯肉炎」へと移行させます。
歯肉炎の始まりは、歯と歯肉の境目に「赤いハッキリとした線」として確認されますが、それが次第に歯肉全体に広がっていきます。その頃には、歯石の付着もさることながら、歯肉炎も口腔内全体に広がっていて、その口腔粘膜もきれいなピンク色であった色が、痛々しい赤色になっている変化で分かります。
またこの頃には、愛犬ナポリちゃんのいつものダッコしてあげた時のお返しのペロペロも、「強い口臭」のためにチョッと遠慮させて頂きたい心境になるほどです。その頃の口腔内の状況を「歯周炎」と言います。しかし、もう少しその歯周炎が進んでくると歯肉の腫れや、歯肉からの出血も見られるようになり、歯と歯肉との間にポケットができて化膿が進んできた全体的な状況を、「歯周病」と表現されます。
3.上顎・第四・前臼歯・歯根尖部・膿瘍(じょうがく・だいよん・ぜんきゅうし・しこんせんぶ・のうよう)
一方、そこを「すみか」としている細菌は、次第に内部に侵入し、歯根尖部(しこんせんぶ;歯の根の先端部)に化膿層をつくり、歯槽骨(しそうこつ;歯の根っこが埋め込まれ、ささえている骨)をも溶かしてしまい、「歯根先端部膿瘍(しこんせんたんぶのうよう)」を形成します、その化膿した膿みと発生したガスが外部に漏れ出てくる状況を「歯槽膿漏(しそうのうろう)」と言います。
そうなると、通常片方の顔が腫れ、発熱し痛くってフードも食べれなく無くなります。歯槽膿漏では、腫れた頬(ほほ)の皮膚の色が赤黒くなり盛り上がってきて、すぐにその皮膚にアナがあいて、臭い膿汁が出てきます。犬でも猫でも人でも、その進行状況は同じです。私たち獣医師からすれば、片側の頬の腫れてきた時点で、気付いて病院に来て欲しいのですが、アナが開いて明らかな歯槽膿漏になってから病院を訪れる飼い主さんがほとんどです。そのとき私はその飼い主さんに、「め!」とその子の代わりに「ダメ出し」をしてあげます。
犬猫で最も一般的に「歯根先端部膿瘍」または「歯槽膿漏」が見られる場所は、上顎の犬歯の後ろへ第四番目の大きな歯、つまり「上あごの第四前臼歯」で、その歯の根元の奥の化膿が皮膚表面に現れる歯槽膿漏は、目のすぐ下にアナが開くことで分かることが多いのです。
4.奥さん、そのままほおって置くと、大変なことになりますよ
年齢のいった歯石付きの多い犬猫で、目の下の頬の皮膚にアナが開いて来院する子が結構います。そのくらいまでに歯周病が進んでくると、歯がグラグラになるだけでなく、その歯周病菌が毒素を出したり、菌そのものが体内に入り血液の流れに乗って、肝臓や腎臓や心臓にまで到達し、それぞれの臓器で炎症を起こしたり、菌の巣を作ったりして肝炎・腎炎・心内膜炎などの原因にもなるのです。
ビートたけし風にいいますと、「奥さん,ほおっておくと、大変なことになりますよ」です。そうならない前に、対策を取りましょう。その基本が「歯みがき習慣なのです」。
5.歯垢・歯石 の予防方法は?
- 歯垢・歯石が 「付きやすい」・「付きにくい」の差は、フードで調整できるか?
そもそも、歯石の付着度合いは、唾液の分泌量によって違ってきます。唾液の分泌量の多い子犬は付きにくく、唾液の分泌量の少ない老犬はより多く付きます。そのことから、軟らかいウエットタイプのフード〔缶、パウチの類)を食べている犬の方が、硬い粒の大きいドライフードを食べている犬よりも、より早くより多くの歯垢・歯石が付着することが証明されています。
同じようにドライフードを食べている犬や猫であっても、そのドライフードの形状(大~小)が歯垢・歯石の付着度合いに大きく影響していることが分かってきています。
一気に飲み込む、小さく食べやすい食べやすいドライフードより、大きく噛み噛みしなければならないタイプのドライフードの方が、はるかに歯垢・歯石が付着しにくいことも証明されています。ヒルズ社の 「T/D オーラルケアー」がそれです。
このフードの特徴は、繊維物質を長いままフード原料に使用して、犬・猫が食事の時にそれを噛む事で歯みがき効果を出すと言う発想です。面白いものです。
また、これらの犬・猫の口腔内の科学的研究から、大粒のドライフードに、唾液中のカルシュームと結合(キレート化)する物質を吹き付けて、「そのフードを犬・猫が噛む事で唾液中のカルシュームが、歯垢から歯石へ変化させるのを防止するフード」が開発(マイクロクレンジングクリスタル法)されています。アイムスの「ヘルシーエイジング・プラス」(犬用)がそれです。
いずれにしろ、歯垢・歯石の予防を考えているあなたは、「ドライフード」しかも粒の大きめのドライフードを選ぶべきです。「超小型犬だからフードの粒も超小さく」なんて、ヘリクツ全く理に適っていません。食事の時に、間違って気管の方にフードが入って「咳き込んでいる犬」結構見かけます。最近のドライフードの粒は、小粒が多くなっている傾向があります。かた先生はそのことが、上記の理由で気に入りません。
これは、「犬の機能性食品」と言えます。(このホームページから購入できるように設定中です**それまでは、注文書の余白に書いてフアックスすればOKです。)フードの開発企画概念がスバラシイ、「1歳以上の犬の、理に適っている」ので、かた先生のお勧めです。
チワワやヨーキーだから、プードルだから小さい粒がイイノ? なんてとんでもない発想です。チワワやヨーキーだってプードルだって、注射のときに大きな口を開けて、私のゴツイ手にシッカリかみますよ。あれだけでかい口を開けられるのですからフードの大粒サイズなど「私のかまれるゴツイ手に比べれば何んのその」です。
今あなたは、ナポリちゃんにウエットタイプのフードを与えているのでしょう。(アタリ !!) 明日からドライに換えなさい。しかし、ドライに変更しても、お湯かけして「ふやかして与える」と同じですョ。先にダメだし、しときます。 - 歯垢・歯石防止用の口腔内塗り薬やスプレーがあります。
最近、アメリカではやっている方法です。口臭取り剤ではなく、ガムでもありません。歯垢・歯石防止剤です。VETZ LIFE(ベッツ ライフ)オラルケアージェル
口腔内歯に塗りこむタイプは、上の歯の犬歯から4番目、歯石の着きやすい「第四前臼歯」あたりに1.5cmほど塗ります。左右の歯に塗ります。初めの2週間は一日2回、その後一日1回。 だいたい一ボトルで100回分、86日(約三ヶ月)分です。金額は、7,000円~10,000円 ぐらいですが、結構いけます。
LEBA Ⅲ(ラーバ スリー)
スプレータイプもあって、私も二年前からテストで使用しています。臭い口臭は三日で治まります。歯肉炎にもいい感じがします。後でも述べますが、歯石を取るのもいや、歯みがきもできない。そういう方に、お勧めです。一瓶使い切った頃に、ためしに歯石取りをしてみたら、本当にあの硬く歯にシッカリくっ付いていた歯石が、ポロリと取れました。
初めはアメリカのコマーシャルは信じていなかったのですが、気持やわらかくなっていた気がしました。アメリカ人は「面白いものを作ったものだ」と感心したしだいです。まだ何本か残っています。有償試験の希望者を探しています。 - 犬猫の歯垢・歯石の予防には、「歯みがき」が一番、でんわわは、イッテミヨ-サンキューニャンワン。534-3921
歯垢・歯石の予防には以下があります。
(1)化学的反応により付着しにくくする方法。
(2)物理的に付着しにくくする方法。
「歯みがき」や「大粒のドライフードを噛む」というのは、物理的に付着している歯垢を取り除くということです。人間の場合と同じで口腔ケアーは「食後の歯みがき」が一番です。これに勝るものはありません。動物の歯をきれいにできるのは、歯ブラシの機械的に「こする」という物理的作業によるものだけなのです。 - 「歯みがき」は、いつするの? 回数は?
歯垢は、いくらきれいに歯を磨いても、6~8時間で再び歯に付着します。そのまま放置しておくと、3~5日間で、その歯垢は歯石へと変化し、歯にサンゴ礁のように付着して「歯みがき」では取れなくなってしまうのです。
もちろん「歯みがき」は、人の場合と同じように、食後の30分以内が良いのですが、そんなことを一日に2回毎日犬に続けられるほどの暇な人はあまりいません。
逆に、もっとルーズに考えるなら、もし完全な歯みがきができるとしたら、歯石の付着理論から「犬猫の歯みがきは三日に1回すれば良いことになります」が、「しつけに厳しい」かた先生はあなたに命令します。「しつけとして毎日少しづつでも良いから一日1回以上、三日で3回以上、あなたの21(ニャンワン)に実行しなさい」それがいい、それがいいと、かた先生のお友達(山口先生、伊藤先生、沼先生、平田先生、藤本先生、十河先生、松井先生、梶原先生、田形先生、吉田先生)もそう言っていました。
6.今、歯石が既にリッパにある子は、どうしたらいいの?
歯垢は、「はみがき」をすることで取る事が出来ますが、一度歯に付着した歯石は「ブラッシング」しても取れません。人が歯石を取るために「歯科医院」に行くのと同じように、ニャンワンたちは「動物病院」に行って取ってもらいます。それを「歯石の超音波スケーリング」と言います。人の場合と、犬猫のスケーリングとは同じ道具を使用して行いますが、ひとつだけ違うことがあります。
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犬・猫に実施するときは、全身麻酔を使用します。
人は「はい、口を開けて!、そのまま少しガマンして!、痛くはありませんよ!」と言うことで、患者さんは口を開けていてくれますが、犬猫の口の中に器具を入れて、特に超音波スケラー(超音波の振動を歯石にあてて、歯石を歯の表面の象牙質に傷つけないで、歯からはがす道具)を、麻酔なしに使用すると、犬・猫はパニックになります。
その危険性を防止するためには「手術と同じように、全身麻酔をかけて、スケーリングする」事になります。彼らもその方がラクです。シッカリ口腔管理をして頂ける動物病院では、歯石スケーリング取りの後、本格的に歯みがき(ポリッシング)をしてくれます。また、かなり口腔粘膜が傷ついているのと、歯根ポケット内の細菌を殺滅する口腔治療の必要性から、抗生物質の注射と5日間程度の内服薬をセットで「処置」しています。
但し、見かけ価格を下げること、抗生物質処方と面倒で時間のかかる作業ですので「ポリッシング処置」をしない動物病院の方が多いですが・・・・。シッカリきれいにして頂けるところでは、その後シャンプーもして頂けるようなセットです。当院でも以前はシャンプーは、していなかったのですが、口はきれいになったが、口の周りが汚い(口から歯石や血液などがダラダラと流れ出て、口の周りの毛を汚すため)のでシャンプーを希望する方が多かったために、シャンプーを「歯石取りセット」として一環実施してすることになっています。 実際には、40分ほどの作業です。 実際には40分ほどの作業なのですが全身麻酔をするので6~7時間の入院という行程になります。 その間に、家の中のお掃除でもしていてください。もしグラグラしている歯がある場合には、そのとき一緒に麻酔下で抜歯または治療してもらえれば、犬・猫も痛くはありません。麻酔から醒めたとき、舌をぺろぺろ出して「あれ?、不思議だな?」と言う顔をします。 面白いですよ!まあー、ナポリちゃんは少なくとも、一度は「シッカリ管理したいただける動物病院」で、歯石取りをしてもらいなさい!
7.「歯みがき上手な犬」にする方法
・・・・・ 長くなったので、歯みがきの実技指導は次回へまわします。